恐怖のメンダコ騒動…アクアマリンふくしま

DSCF0109s アクアマリン福島にメンダコが展示されたと聞いて、我慢できなくなって見に行ってしまったのですが……?!

 わたしとメンダコとの出会いは、16年前の1999年のこと。「葛西臨海水族園でメンダコの展示が始まりました」というニュースをテレビで見たのが最初でした。短いニュースでメンダコが映っていたのもほんの一瞬。その時見たのはこんな感じの物体でした。

mendako
▲ニュースで見たメンダコを記憶スケッチしたもの。当時まだインターネットが普及しておらず(わたしのサイトはすでにあったけどね)、検索なんかじゃろくな写真は見られなかった。

 タコなのにクラゲみたいにやわらかくて、水中をふわふわ漂ってる。そして腹(頭みたいに見えるところ)にヒレ(耳みたいに見えるやつ)が生えてる。なんだこのかわいい生き物はっ!! 一瞬で惚れたので、わりとすぐ見に行こうとしたはずですが、電話で問い合わせたらもう死にましたと言われて実物は見られませんでした。なんか、メンダコって飼育するのが難しいらしいんですよ。深海の生き物で、光のストレスにものすごく弱くて、20日くらいで死んじゃうことが多いみたい。

 時は流れて2015年、福島県いわき市の、アクアマリンふくしま(水族館)でメンダコの展示が始まったと聞きました。なんでもここでは去年も展示されてたそうなんですが、意外と長生きして56日くらい飼育できたらしいです。それでも56日ですからね。先延ばしにしてたら見られないかもしれないです。東北といってもいわき市くらいなら遠くはないし、おともだちに話したら車で行こうということになって…

IMG_1208s  ニュース見てから2日後の6月27日、来ちゃいましたよ、アクアマリンふくしま! ここは2度目。前に来たのは震災間もない頃で、営業再開したと聞いて半分応援の気持ちで見に来たんだったと思います。ところが想像してたのよりずっと面白くて、応援なんかじゃなく普通に来たい水族館のかなり上位に入ってます。もし駅の近くだったら年パス買って青春18きっぷの季節に来るんですが、駅からが遠く路線バスの本数が少ないので、なかなか来られません。

 で、メンダコですよ。見学順路でいうと半分以上見たところにいて、他にいろんな面白いものを見てるんですが、それはあとで書くとして、まずメンダコ。珍しくて面白くてかわいい生き物で、どう考えてもいきもの界のスターになりうる存在なのに、展示自体は強烈に地味なんですよねえ。メンダコのことを知らない人だったら立ち止まりもしないかもしれません(笑)

 なんせ、とにかく光に弱いそうで、全体に薄暗い水族館の中でも特に真っ暗な隅っこ。水槽全体に黒いシートが貼り付けられていて、そのシートが子供の目の高さあたりに直径30cmくらいの円形に切り抜かれてます。ツイートで50cmとか書いたと思うんですけど、改めて手ではかったらそんなに大きくないですね。そののぞき窓から中を見ると、赤くほのかな照明があるだけで中も薄暗い。

 そこに妙な固まりが置いてある。置いてあるってのも変ですが、水底に丸い肉塊があってじーっと動かない。ほんとに動かない。よーく見てるとやや揺れるんですが、自発的に動いてるというより水流で揺れてるだけみたい。とにかく動かない。

 フラッシュをたいたカメラの絵に禁止の印がついていて「これは撮影禁止なのか、フラッシュ禁止なのか」と来る人が口々に言ってる。だよねー。これじゃどっちかわからない。とにかくフラッシュは絶対ダメのはず。生き物にストレスを与えないことが目的の禁止事項ならば、フラッシュを焚いたり照明をあてたりしなければ問題ないはずなので、光らないように設定したカメラで写しては見たものの、真っ暗にしか写らない。シャッター速度を遅くするなど暗い場所の設定にすると手ブレしちゃうし、撮影に手間取ってるとのぞき窓を独占することになるのでよろしくないし。

 しょうがないので、またもや記憶スケッチですよ。21世紀になってもやることは変わらないのです。機材が紙と鉛筆から iPhone になったくらい。便利というよりむしろ退化。こんな小さな液晶に太い指でどうしろっつーの。カメラじゃなくてスケッチブックと鉛筆を持ってくるんだったわ。

IMG_1226s
 こんな肉塊が薄暗い水槽の底でじーーーーっと動かない。水槽の前でしばらく待ってたけど動く気配がない。初めての生メンダコ体験は「暗くてよく見えない場所に動かない謎の肉塊」でした。高速代だけで往復6000円ちょっと、水族館の入館料は1600円/大人1人。なんという高級な怪奇体験。怖すぎる、メンダコ、怖すぎるよ…… ちなみにここにいるメンダコは「オオメンダコ」という種類だそうです。

 ほかのものを一通り見てからもう一度メンダコだけ見に戻って来たのですが、ヤツはさっきとほとんど変わらない場所にいて、向きだけ変わってた。前に見た時から2時間くらいたってると思うので、その間にほんの一瞬ふわっと泳いで、方向転換して着地するくらいの動きは見せたかもしれないです。ヤツの水中浮遊を見るためには朝から晩まで水槽の前に張り込んでいないとダメなんだろうか……ライブカメラつけて椅子のあるところにモニター置いてくれません?(そこまでするほど長生きしないw)

IMG_1213s ▲マイワシの大群

 この水族館はなんでこんなものが?!という地味な魚の展示がすごい。この写真のマイワシは大水槽に入ってるんですよ? 大水槽ってふつーもっと大きくて見た目のすごいものを入れるじゃないですか。ここの大水槽に入ってるのは大衆魚のマイワシ。でもこれがすばらしく美しいの。順路も面白い感じになっていて、入り口から入ってくると温室みたいなところに出るんですが、そこになんの説明もなくガラスのプールのようなものがあって、銀色の小魚の大群が泳いでる。どうもイワシっぽい。形や大きさは魚屋さんでよく見るマイワシに似てるのに色が違う。そこからは水面も見えるので、その水槽がプールみたいに広いことはわかるんだけど、深さはよくわからない。順路にしたがい先に進むと、忘れた頃に大水槽の前に出る。そこでハッと気付く。さっきのイワシっぽいものは、こんなでっかい水槽に入ってたのかと。種名板はそこにしかなくて、マイワシって書いてある。マイワシ、これがマイワシ?そうか、イワシは死んじゃうと鱗がはがれたりして、生きてる時と色が変わるのか!という驚き。いいね。この展示好き。

IMG_1260s IMG_1262s ▲キンメモドキの大群

 大群だとキンメモドキも面白い。写真じゃわからないでしょうが、こいつら体が半分透けてる。一匹ずつ見ても光の当てかたによっては観賞魚になりうると思うんですが、それが水中で一カ所にあつまってる。みんなが同じ方向を向こうとするらしいんですが、あまりに沢山いるので、こっちの魚とあっちの魚で動きに時差がでるじゃないですか。その時差にあわせて近くの魚が向きをあわせようとするらしくて、集団の先頭が複数個所あるように見えるんですよ。それが動き的にみょうに面白い。そして、何かのきっかけでブワッと水面近くまで舞い上がるんですよ。群れを追って目をあげると、そこにハナゴイという赤紫の魚が優雅に泳いでいて、竜宮城かっ!と突っ込みたくなるような光景です。で、そんな美しい大群ショーのまわりで、なぜか群れずに一匹で泳いでるキンメモドキがチラホラいるんです。え、なんで?こんな限られた空間で群れからはぐれるとは思いにくいんだけど、なぜ単独行動してるの?自然界では何かの餌食になってしまわない?いや、餌食になるためにわざとはぐれてるのかな。コイツらが食われてるあいだに群れ逃げるのかな……なんてことを考えてしまう、すごい水槽です。

IMG_1220s ▲ひとなつっこいエトピリカ

 海獣類と海鳥の水槽も面白い。トドでっかいよ、すっごくでっかいよ!!それが目の前をずどどどどどっと泳いでくるの。でかっ、ちかっ。なんかここ展示物までの距離が近いのよ。上に貼ったエトピリカなんて、カメラを向けると逃げるどころか近づいて来る。水槽ごしだから写りは最悪だけど(笑)ちなみにエトピリカという名前はアイヌ語由来です。 Etu エトゥが鼻(もしくは鼻面、くちばしなど、顔の中でとんがってる部分のこと)で、pirka ピリカは美しい、良い、という意味です。

IMG_1254s ▲オオグチボヤ

IMG_1243s ▲トラウツボ、なにこの角みたいなやつは。お前はキリンかっ。

IMG_1237s ▲何かを丸出しにして寝ているユーラシアカワウソ。ガラスの反射が残念ね。

IMG_1231s ▲この魚はなんだろう。写真だと特別変わった風には見えないかもしれませんが、肉眼で見ると糸が絡まってるみたいに見えて面白いです。

IMG_1227s ▲食堂のメニューその1、クジラの串揚げと何かのフライ。味噌汁にもクジラの脂身が入ってた。880円。正直いうと美味しいってほどでもなかったです。串揚げはパン粉の衣が邪魔。クジラの味を楽しむなら竜田揚げがいいよねやっぱり。味噌汁も鯨ちょっぴりでものたりない。見た目も病院食みたいで微妙でしょ。でも値段から考えると頑張ってるし、何よりこのメニューで、この水族館が捕鯨に反対してないことがわかる。すごいメッセージだと思う。

IMG_1228s ▲食堂のメニューその2、カジキマグロのメンチだったかな。これも880円。カジキメンチはいわき市の名物だそうです。

 アクアマリンふくしまは、見るだけでなく美味しい水族館を目指してるらしいですよ。生け簀から釣ったアジをその場で調理して食べられる釣り体験なんかもやってます。すぐ隣が小名浜の漁港なので、魚はただ愛でるためのものではなく、食べて利用する海の恵みだってことですね。そういう感覚は大事だと思う。人は自然界の孤児ではなくて、生態系の一部なんだと自覚すれば、保護という言葉が「自分のためにすること」であると気づくはず。生き物がかわいそうだからなんて上っ面の感情でするのではなくて、人間を含むあらゆるいきものがより良く暮らすために、環境とそこに生きるものを大事に使うんです。あらゆる生き物が互いに食べたり利用しあったりして暮らしてるんです。ヒトもまたその一部でしかないじゃありませんか。

 というわけで、アクアマリンふくしま、面白かったです。あ、ちなみにここらは放射線はぜんぜん問題ないです。あっちこっちに測定数値が貼られてたりするし、わたしは線量計を持ってるので来るたびに計ったりもしてますが、ぶっちゃけ葛飾区で計るのと変わらないのです(いわき市が安全なのか葛飾区が危険なのかは知らないけどねーw)。

 ちなみに、葛飾区内のわたしんちからアクアマリンふくしま水族館まで、車だと三郷ICから常磐自動車道にのって、いわき勿来ICで降りて、下の道を30分くらい走ります。渋滞さえしなければ3時間くらい。この日は行きに事故渋滞が4カ所くらいあって(事故ありすぎ)4時間ほどかかりました。帰りは3時間程度。水族館だけ見ればいいのなら余裕で日帰りコースだし、一泊すれば他にいろんなところが見られますね。車ならそんなに遠くないところに常磐ハワイアンセンター(じゃなくて今はハワイアンズっていうの?)があります。

カテゴリー: いきもの, 旅行, 車の旅 タグ: パーマリンク
avatar

珍獣ららむ〜 の紹介

特技はおりがみとお蚕の飼育と世の中の役にたたないこと全般です。養蚕が普通の仕事だったらニートでヒキコモリの体質から脱出できそうな悪寒がします。DQ10はほぼ引退しました…だってストーリーが完全にソロゲーなんだもの。/ちなみにわたしが珍獣を名乗っているのは1999年からで、イモトよりも古いです。ワンピースは知らん。イモトですねって聞かれるとあっちがマネだと答えたくなる。 twitter などでは chinjuh です。

恐怖のメンダコ騒動…アクアマリンふくしま への2件のフィードバック

  1. teteg のコメント:

    カワハギみたいな魚は「ヒゲハギ」ではないでしょうか。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      こんにちは!
      コメントいただいてたのに気付かなくてすみません。
      ヒゲハギ、検索してみました。
      なるほど、これはヒゲハギっていうんですね!
      ありがとうございます。
      面白い魚でした。ちょっと気に入ってます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>