解読:勝五郎再生前生話(1) #くずし字 #前世

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 『勝五郎再生前生話』文政年間(1800年代前半)の本で、勝五郎という少年が自分の前世を語り出したという実話を記録したものです。

 まずは原文のまま書き取る作業中です。最終的には口語訳して(する必要ないくらい読みやすい古文だけど)完成したらキンドルで売ってみよう(ぜんぜん売れないんだけどね、爆死)。

底本
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_00361/

児子再生前世話(勝五郎再生前生話)




(空白)
ーー
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0002.jpg
武州多摩郡中野村勝五郎再生前生話

(上段)
文化十二年乙亥年十月十日出生
源蔵父尾州家士村田吉太郎
尾州にて御弓役相勤□屋い十二才の時
本多大の?□□に奉公すと云屋い十三才
の時故郷にて浪人と成る
寛政四年四月二十七日七十五にて?病死
墓所禅宗ゑいきん寺


多門傳八郎知行所
武州多摩郡柚木領中野村 小名谷津入
  百姓 源蔵次男
    勝五郎
     当未九才
  父 名字小谷田 源蔵
     〃四十九歳

   貧窮に付籠細工いたし江戸に商う
   宿所馬喰町相模屋長兵衛方

  母 屋い
  祖母 つや
   若年の時松平隠伎守殿に奉公す


# 家士:かし。家人と同じ。その家に仕える侍。
# 知行:ちぎょう。俸禄としてもらった土地。扶持。多門傳八郎知行(傳八郎さんの領地的な意味か)



http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0003.jpg
  姉 ふさ
   当未十五才
  兄 乙次郎
   〃 十四才
  妹 つね
   〃 四才


中根字?右衛門知行所
武州多摩郡小官領程程窪村
    百姓半四郎伜 実父藤五郎死す
     六才にて死  藤蔵

文化二乙丑年生同?七庚午年二月四日昼四時比?死去病症疱葬地同村の山
菩提所同領三沢村禅宗医王寺と云
文政五午年十三回忌也

  藤蔵養父名字垣?崎
    半四郎
     当未五十才

# 程窪村=程久保村
ーー
 藤蔵母
  しつ
   〃四十九才

 藤蔵実父
  藤五郎
    死

 □名久兵衛といふ文化五戌年藤蔵四才の時四十八歳にて死去
 此□・半四郎入ま?に□□□文政三辰年十三回忌也

 藤蔵胤替り兄弟
   半四郎伜
     両人

 同人娘
    両人


去る午年十一月のひ勝五郎姉ふさとたんぼ
にて遊ひ□るが勝五郎姉に向ひあねさんはどこ

# 胤替り:後妻の連れ子のこと。



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から此家へ生れて来たと問ふどふして生れて
来た先が知れるものかと姉いへば勝五郎
あやしけなる躰にてそんならおまへは生れぬ
先の事は知らぬかと問ふ姉てまへは知て居る
かといへば勝五郎知てゐるのさおらああの程久保
の久兵衛さんの子で藤蔵といつたヨ姉そんなら
おとつさんとおかあさんにいわふといへば勝五郎
ーー
泣出しおとつさんとおかつさんにいつちやァわるい
姉そんならいふまいわるい事をするといつつ
けるそと迚言兄弟喧嘩などすればかの事
をいわふといふ置にやめる事度々なれば両親是
を聞つけいかなる悪事を成せしやと案事娘
ふさに責とひければ房止事を□ずありのまゝに
告るに源蔵夫婦つやも□不審におもひ



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勝五郎をすかして色々とせめ尋ねければそんなら
いはふ迚おらァ程窪の久兵衛さんの子でおつかさん
の名はおしつさんといつたおらが五つの時久兵衛
さんは死んで其□に半四郎さんと云が来て
おれをかあひがつてくれたがおらァ其あくる年
六つで疱瘡で死で夫から三年めにおつかさんの
腹にはいつてそれから生れたと云ふ両親祖母
ーー
是を聞て大に驚きどふぞして程窪の半四郎
といふ者を尋て見んと思へども身すごしに□れ
其□に□□□らに母屋いは四つなる娘を常に
乳を飲するゆへ勝五郎は祖母つやにだかれて
毎夜\/物語するゆへ勝五郎が機嫌を見合せ
その死せし時の事を尋聞に勝五郎四つ位迄は
よく覚て居たが段々と忘れたが疱瘡で死んで


# で始まる行はメモ
□は読めない文字
?は直前の文字に自信がない

ここまでのあらすじ
「勝五郎少年が、姉と遊んでいる時に、自分の前世を程窪村久兵衛の息子だったと語り始める。そのことは姉弟の秘密になっていたが、ある時、両親がききとがめて話させる。どうにかして久兵衛を探しに行きたいが乳飲み子をかかえているのでままならず…」


以下、読みにくかった字と、まだ読めてない字

くずし字1 くずし字2 くずし字3 スクリーンショット 0029-01-16 13.33.19

家系図にしてみた

家系図  □で囲ってある「勝五郎」と「藤蔵」が、この話の中では同一人物(生まれ変わり)ということになっている。

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珍獣ららむ〜 の紹介

特技はおりがみとお蚕の飼育と世の中の役にたたないこと全般です。養蚕が普通の仕事だったらニートでヒキコモリの体質から脱出できそうな悪寒がします。DQ10はほぼ引退しました…だってストーリーが完全にソロゲーなんだもの。/ちなみにわたしが珍獣を名乗っているのは1999年からで、イモトよりも古いです。ワンピースは知らん。イモトですねって聞かれるとあっちがマネだと答えたくなる。 twitter などでは chinjuh です。

解読:勝五郎再生前生話(1) #くずし字 #前世 への17件のフィードバック

  1. 一円 のコメント:

     あれ、この源蔵さん百姓と言いながら名字があるぞ。と思ったら、続いて父は元尾張のとあるので納得。百姓にも名字は有ったようですが、それが伝わることは稀だったので、「百姓、町民に名字は無い」が定説になったらしいです。
     さて、読めない字の2段目の右。字の形からは「幼名」らしいですね。これなら意味も通じるでしょう。ほかは…唸ってます。ららむーさんがかなり読んでくれているから推測出来るわけで、自分ではとても読めません。
     またそのうち何か思いつくかも。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      幼名!!!
      なるほど、幼名なら通じます。
      こういうのはひとりで読んでいると思い付かないものなんですよねえ。
      百姓の名字についても興味深いお話ありがとうございます。
      名字を許された百姓でも子供が受け継ぐとは限らないわけですね。

  2. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    ひとつわかりました。
    此□半四郎…は「此跡」ですね。
    足偏は心みたいにくずすのか…なかなか覚えられない。

  3. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    このあと最後までざっと読んでだのですが(すごく易しかった。初心者向けなので勉強中の人は読むといい)、「幼名」ではなく「初名」かもしれないですね。勝五郎が父の名は久兵衛と言ってるので、大人になってからも久兵衛なんです。その後改名したということなら、初名(しょめい)のほうがおさまりがいいです。

  4. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    さらに人名で「屋い」は、「やい」に改めようと思います。屋はふつうに変体仮名で使われるようなので。

  5. 一円 のコメント:

     なるほど。ららむーさんの見解の方が適切なようです。それにしてもこれがまた何が何やら。
    http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1249929877

     最下部の写真版の右。
    其□に「御抱」(おかかえ)
    のような気もします。同じ手偏らしいものを御とするのは無理としても、「抱」は近いのでは? 
     と書いているうちにやっぱり無理があるので、「打抱」かなと思い始めました。御抱ではどこかの屋敷に召された意味にしか取れません。打抱なら何らかの感情を持ったり、物を携えていることになって、意味が通じやすくなるかもしれません。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      打抱はすごくありそうなんですが、前後が読めないので確証に至らないのです。打ち抱きなら、続きはなんと読むんでしょう。結局、読めないところは意味がわかってない部分なんです。

      ・程窪村半四郎をたずねたいが行きそびれている
      ・(ここに読めないフレーズ)
      ・母やいは四つになる娘に常に乳をやるのに忙しく
      ・仕方なく勝五郎は祖母に抱かれて毎夜話をしている

  6. 一円 のコメント:

    原書を自分で見るべしというお叱りがありましたので、冒頭のごく一部だけ。
     読めない字の2段目の中。「本多大の(?)□□」。「の」に関しては判りませんが、続く二文字は「屋敷」ではなかろうかと推測。
     「の」ではなくて、本多「大?」さんという名前か、何らかの役職名か。役職名ならそういうのに強い人なら即座にいくつかを指摘出来る気がします。この字が付く役職で私が思い付くのは「大炊」だけです。ただ役職だとそのあとに頭、主、介といった位を示す文字も付きそうです。
     或いはこれが武家の姓名を記す場合の慣習に則しているなら、単純に本多さんの名前と捉えて良いでしょう。いずれにしても知らないことが多過ぎると実感します。

     尾張藩なら史料はあるだろうからこの本多氏を特定することが可能としても、相当な手間がかかるなあ。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      いやいや、ありがとうございます。
      叱ったとか、そういうことじゃなくて、一部切り出して見たところで、結局わからないものなんですよ。なんせ、ほとんど同じにしか見えない別の文字が大量にあるので、どうしてもわかんないところは、前後の流れで想像して、なおかつ字形と矛盾してないかどうか考えます。

      尾張藩の件は、なんせ田舎の百姓が「もと尾州の」と言ってるわけで、実際そうだったかなんてわかったもんじゃないですから、調べてどうにかなるものじゃないと思います。ありがとうございます。

      屋敷の件はちょっと見てみますね。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

       人名がややこしくて自分でもわけがわからなくなってきたので家系図を作って本文の最後に追加しました。

       そして、一円さん、本多大の「屋敷」であってそうですよ!!なるほど、落ち着いて見るとまったく屋敷です。もう完全に屋敷にしか見えなくなりました(呆然)。

       本多大(あるいは本多大之、かもしれないが)が誰なのかはよくわかりませんが、本多流という弓の流派があるそうなので、たぶんその家柄の家なんだと思われます。

       尾州の家士・村田吉太郎は、状況から考えると やい の父親なので、御弓役だった関係で本多家に出入りしてた……かどうかは書かれてないのでわかりませんが、読者がそういうことを察する部分なんだと思います。

       祖母つやが松平隠岐守に仕えていたとかも、当時の読者なら「そりゃあ立派な人たちだ。ウソなんかつくはずがねぇ」ってな感じだったんだと想像します。

       そんなこんなを整理して読み直したら、人物紹介の部分は、ほとんど埋まりました。

      本多大の?□□に奉公す →本多大の屋敷に奉公す
      #あるいは本多大之で人名かも

      昼四時比? 比で「ころ」と読ませるのは国語の辞書にもありました。

      □名久兵衛といふ → 初名久兵衛といふ
       #あるいは幼名

      此□・半四郎入ま?に□□□文政三辰年十三回忌也
       ↓
      此跡へ半四郎入夫に候由尤?文政三辰年十三回忌也
       # 入夫は婿に入ること。「この跡(後)に半四郎が婿入りした由(よし)である」
       # 尤は、こういう使い方の例をほかに見た事がないので自信なし。

      大変ありがとうございます。
      あと本文悩まないと。ほほほほ。

  7. 珍獣ららむ〜 のコメント:

     さらにわかりました。

     「本多大之」と「屋敷」の間にごにょごにょっと何か書いてあるので「大之進」という人名っぽいですね。
    http://clioapi.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ZClient/W34/z_detail.php?title=%E9%80%B2&mgno=34058849&count=102&countAll=474
     「進」はいろんなくずし方をするようですが、たとえば↑ここにあるみたいにごにょごにょっと書かれることもあるようです。こんなの前後の流れで読むほかどうしょうもないです。文字を覚えることより語彙力をためされるのが古文書の解読。

     あと、今さらですが、よそのサイトを横目で見たところ、母親のなまえが「せい」になってました。しかし、わたしが見ている本はどう読んでも「やい(屋い)」なので、直しません。

     おそらく、もともとは木版で刷られて出版された本だったのでしょうが、それを手で書き写したものです(要するにコピー。複製したい場合は人が手で書きます)。

     もとの本から直接写したか、写したものをさらに写したかわかりませんが、途中で書き間違いだのなんだのが出ても当然のことです。見たままやることにします。

     ただ、ほかの本(もとの刷ったやつとか)が残ってるんなら見たいものですね。

  8. 初心者ですが のコメント:

    右は「其侭に打拾てむら」のように見えます

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      あーっ、なるほど!!
      点2個に見えるのは「て」でその下が「む」なんですね。
      直前がたぶん「身すごしに[後れ]」なので
      「拾て」じゃなくて、「捨て」だと意味が通じますね。

      > 半四郎といふ者を尋て見んと思へども身すごしに後れ
      > 其侭に打捨てむ[ら]に母やいは四つなる娘を常に乳を飲するゆへ

      「打捨てむ、らに母やいは…」では意味が通じないので
      「打捨て、村に母やいは…」ですかね。
      もしくは「ら」は衍字で「うち捨てむに、母やいは…」でしょうか。

      なんにせよ、ありがとうございます。
      ぐっと進みました。

      あ、あと、わたしに初心者だって逃げ言葉を使うと「わたしも初心者ですが何か?」ってバナナで釘が打てるくらいの低温で冷たく言い返したくなる衝動に駆られるのでやめてください(笑)

      だいたい、こんな適切なツッコミ入れられる人が初心者のわけないし。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      これは「其侭に打捨置く」でした。「置」はいろんなくずし方するので覚えきらないですねー。

  9. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    諦めの悪いわたしはまだやっています。
    >房止事を□ずありのまゝに告るに

    たぶん「房(姉の名前)止るを[得]ずありのまゝに告るに」ですね。
    脳内で「とめる」って読んだのが良くなかった。
    やむるをえず→やむをえず
    「仕方なくありのまま話す」だったら意味が通じる。

    しかし、その次の
    >源蔵夫婦つやも□不審におもひ

    ここがわからない。(不審と書いちゃったけど原文は「ふ審」になってる)
    「皆」では字の形が違うし、
    それ以外に1文字で何が入るか思い付かない。
    あるいは「ふ審」が間違っているのかも。

  10. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    >源蔵夫婦つやも□不審におもひ

    これは「みんなで翻刻」やってたら同じ文字が出てきたので
    識者のみなさんにお願いしたら「甚」だと判明。
    なるほど、下の方が心みたいな正しいみたな感じになるのは匹だったんだ!
    ということで、この回はおおむね埋まりました。
    皆さんありがとうございました。

    続きが気になる方はこのへんから探してください↓
    http://www.chinjuh.mydns.jp/wp/?s=%E5%8B%9D%E4%BA%94%E9%83%8E

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