サムハラを求めて印西東大寺へ #神社仏閣 #お守り

IMG_3900s 印西東大寺(千葉県印西市)ってところに行ってきました。

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 ちょっと前にこんなのをツイートした。葛飾区郷土と天文の博物館に展示されている防空頭巾。謎の四文字が縫い付けられている。この文字は白い布に筆か何かで手書きされている。東海地方で信仰されてる弾よけのお守りだと説明があった。

 この謎の文字は「さむはら」と読むそうで、漢字ではない。では、なんなのかというと、異世界からやってきた謎の文字としかいいようがない。ウィキペディアにサムハラの故事がいくつか掲載されているが、『耳袋』に出ているやつはわたしも読んだことがある。弓のうまいものがいくら狙っても矢が当たらないキジがいる。不思議に思い網か何かでつかまえてみると、背中に「サムハラ」の四文字が書いてあったいうもの。弾よけのまじないとされるのはその故事にちなむ。

 わたしはこのタイプの話が好きだ。読み方もよくわからない謎の文字。その文字に力がある理由もわからなければ、野生動物の体に書いてあるのも謎だし、それを見た人たちが文字を書き写してお守りとして持ち歩くというのも不思議で、この意味不明さがジンワリと恐い。

 そのサムハラにまつわるお寺や神社が各地にあるそうだが千葉県内にもあるという。印西東大寺。場所は印西市平岡、成田線の小林駅か木下駅から徒歩で30分くらい。検索してみると信徒さんの手作りとおぼしき公式サイトがあった。

 サイトには法話が沢山あり、墓地分譲のお知らせなんかもある。東大寺の歌なるものまで掲載されていた。昔の環境ならmidiデータが自動再生される仕組みのようだがうちでは鳴らなかった。ソースからファイル名を見てダウンロードしてみたら「ふーじはにーっぽんいーちーのーやまー」というあのメロディーが流れた。なるほど、替え歌か。このテイストは懐かしいな。昔は鉄道唱歌や浦島太郎のメロディーで、村や町の歴史を説明する歌などが各地で作られてたはず。

 公式サイトはいろんな意味で愛すべきものを感じるが、寺自体は観光地ではなさそうなので、ぶらっと出かけて面白いところだろうか。そのあたりの地図を見ると、北総線の印西牧の原駅にもそれほど遠くなく、徒歩だと1時間くらいかかるが、車なら10分とかからない。ジョイフル本田などのショッピングモールがあるところだし、車を持ってるともだちと出かけてみることにした。

 スマホのナビに案内させ、葛飾区内から車で1時間ちょっと。たどり着いたのは利根川のまわりに広がる田園地帯。お寺は静かな里山の中腹にあった。なかなか立派な寺で入り口の門柱の上に、高さにして50cmくらいの金剛力士像が立っていた。駐車場に「無断撮影を禁ず」という貼り紙があった。

 このあたりで同行してくれたおともだちがおかしくなりはじめた。「撮影を禁ずというのはどういう意味なのか、撮影してくれと言ってるのか」と口走る。正直何を言ってるのかよくわからず「漫才のネタじゃないんだから、禁ずと書いてあったら禁止」と3回くらい言い返した。ダチョウ倶楽部の「押すなよ」みたいに「押せ」というネタ振りなのかと聞かれたのだと思ったからだ。が、そうではなくて、どうも「禁ず」という言葉の意味が素でわからなかったらしい(注:おともだちは中年だし普通に日本人)。いや、わかってないとは思えないので、様子がおかしくなってるとしかいいようがない。年齢的に脳の血管でもキレてなければいいんだけど。

 入って正面が本堂。まずはお参り。賽銭箱の横を見ると、小さな段ボール箱の中にお守りが沢山入っている。見るとサムハラのお守りだった。インクジェットプリターで印字したものをパウチして、ハサミで切りそろえて鈴のついたストラップ金具をとりつけてあった。大きさも揃ってない。こ…これは…間違いなく手作りだ… 200円という貼り紙があった。

IMG_3900s ▲表:この謎の文字が「サムハラ」。こういうお守りが小箱にざくざく入っていた。サムハラの上に書いてあるのは梵字「キリーク」。キリークは阿弥陀如来のシンボルで、阿弥陀如来はこのお寺の御本尊様。

IMG_3901s ▲裏:お寺の名前。

 ここでもまた、おともだちがおかしくなり「200円と言ったってお金を入れる場所がない。こんなところに山盛り放置してあったら好きなだけ持っていかれてしまう」などとどうでもいいことを言い始めた。いやいやいや、冷静に考えろよ。これを好きなだけ持って行くかふつう。などと、わたしもあやうく失礼なことを口走りそうになるが「お金ならお賽銭箱に入れればいいでしょ」と3回くらい言い返したところで、横の建物から住職登場、「わかりますか?」と声をかけてくれた。うおっ、変な事を口走らなくてよかった(ってここに書いてりゃ同じである、すみません)。

 ご住職は親切なお爺ちゃんで、サムハラのお守りは全部自分が作っているんだよとおっしゃった。考えてみれば、住職みずから手作りするお守りなど、そう沢山はない気がする。寺や神社独自のお守りでも、どこかの業者に注文して作らせていることが多いはず。そこへ行くと、インクジェットだろうがパウチだろうが、こちらのサムハラは間違いなく自家製。むしろ御利益がありそうとも言える。

 せっかくご住職が出てきてくれたので、なにか聞かなきゃと思うものの、自分でも何を聞いていいかよくわからず「サムハラは昔からこちらのお寺で配っているんですか?」などと聞いたと思う。「そう、昔からあるものだよ」とアッサリした回答。こちらの聞き方が悪いので仕方ない。そもそも聞いて面白い由来など伝わっていないかもしれないし。

 いや、それでも、いつごろからあるものかって聞いてみればよかっただろうか。サムハラ自体は古いかもしれないけれど、このお寺の伝統は、たとえば先の大戦中に弾よけとして頒布したのが最初という可能性だってあるわけで、それなら始めたのは目の前にいるご住職か先代かもしれない。と、今になっていろいろ思うけれど後の祭りというやつだ。

 境内には墓地があり、通路の角ごとに石仏が設置されている。ひとつずつ見て歩いていたら、ご住職がやってきて仏様の説明をしてくれた。曰く、インドではあの世には閻魔大王など十人の王がいて、死ぬと王たちのところを順に通って行くそうだ。それが時代が下ると十三仏信仰にかわり、大地を司る地蔵菩薩から、天空を司る虚空蔵菩薩まで、十三人の仏様の前に行くことになっている。この仏様はどういう意味で…と、境内一周法話ツアーである。ありがたやありがたや。

 一回りしたところでお礼を言ってその場をはなれた。得難い体験だったが、結局サムハラについては何もわからなかった。その後、ジョイフル本田などをぶらついてから帰宅したが、ややボケぎみのおともだちの運転で無事に帰り着けたのはサムハラの御利益かもしれない。


【おまけ】キリークの図解
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 文字ネタをやろうってずっと思ってるんだけど、なかなか手がつかないうちに時間だけ超高速で過ぎていくのでした。阿弥陀様の種字(シンボル)であるキリーク(フリーヒ)は、図解するとこんな感じです。アルファベットで書くと hrīḥ ですが、子音が連続する場合、合体して1文字になります。この仕組みが面白くて好き。

 黒く書いた部分は h を表す部分ですが、日本語のハ行より強く、タンを切る時みたいに喉の奥から息を吐くのでカ行に聞こえるらしいです。そのためフリーヒではなくキリークとカナを振る場合が多いです。ちなみに、赤や青や緑で書いた部分を取り除いて、 h だけにすると、地蔵菩薩の種字になります(読みはハだったりカだったり)。

 あ、見直したらrの斜め棒をつける場所がちがいますね。いかんな、マウスで書いてると他のことに気を取られる。やはり筆で書くべき。がー、だれかわたしにマーヴェリックスで動作するスキャナーください。くださいください。

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 キリークの隙間の部分が仏様に見えるっていう話もよく聞きます。仏様というか幽霊のたぐいを横から見た感じでしょうか。ホトケノザという野草の花が、ちょうどこんな形をしてますね。

ホトケノザ:仏様というよりねずみ男だと思うのはわたしだけか。昔のブログより再利用。

カテゴリー: ふしぎ関連, 文字, 梵字, 街歩き タグ: パーマリンク
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珍獣ららむ〜 の紹介

特技はおりがみとお蚕の飼育と世の中の役にたたないこと全般です。養蚕が普通の仕事だったらニートでヒキコモリの体質から脱出できそうな悪寒がします。DQ10はほぼ引退しました…だってストーリーが完全にソロゲーなんだもの。/ちなみにわたしが珍獣を名乗っているのは1999年からで、イモトよりも古いです。ワンピースは知らん。イモトですねって聞かれるとあっちがマネだと答えたくなる。 twitter などでは chinjuh です。

サムハラを求めて印西東大寺へ #神社仏閣 #お守り への2件のフィードバック

  1. かなこ のコメント:

    サムハラの意味ご住職から
    聞かせていただいたことあります。
    夢に仏様があらわれてこの文字を
    いただいたと。
    その後は近くの踏み切り事故が
    なくなったそうです。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      こんにちは。印西東大寺のお話なら、近くに成田線が走ってますもんね。夢のお告げで事故がなくなるとは、ありがたいお話です。ありがとうございました。

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