新・珍獣様のいろいろ がぼちゃんねる

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日本みじかい昔話「菖蒲湯のはじまり」

音声ファイルはこちら
http://www.chinjuh.mydns.jp/ohanasi/365j/pc0009.mp3
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 それはともかく追加情報です。沖縄あたりだと、ほぼ同じあらすじでヨモギ餅を食べて蛇の子を下ろすってことになってます。しかも端午の節句ではなく桃の節句に由来した話になってます。桃の節句は、もともと旧暦三月上旬の巳の日の行事なので、通ってくる婿殿が蛇なのはそのせいかも知れません。

 それと、チラッと触れたオオモノヌシが通ってくる話ですが、『古事記』のほかに『日本書紀』にも出てきます。こちらはまたストーリーが違ってまして、婿殿がいつも暗闇にまぎれて通ってくるので「明るいところで姿を見せてほしい」と頼むという、エロスとプシュケみたいな話になってます。

参考>『日本書紀』の蛇婿入り
http://www.chinjuh.mydns.jp/ohanasi/otona/0020.htm

 『古事記』にしても『日本書紀』にしても、神様と交わったという話なのですが、時代が少し下って仏教が定着してからだと↓みたいな話になります。

参考>『日本霊異記』の蛇の子を堕胎する話
http://www.chinjuh.mydns.jp/ohanasi/otona/0002.htm
 堕胎シーンが少々エロいです。

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菖蒲湯のはじまり
 ある娘のところに、毎夜うつくしい男が通ってきました。身なりも言葉づかいも立派で、身分ありげな人でしたが、誰もその人の名前を知らず、どこから来るのかもわかりませんでした。

 やがて、娘に赤ん坊ができて、日ごとにお腹が大きくなっていきます。娘の母親は娘に糸を通した針を手渡して
「これをあの方の着物に刺しておくんだよ」
と教えました。

 次の朝、男が立ち去ったあとには糸が垂れていました。糸をたぐりながら男のあとをつけてみると、そこは山奥で、男は大きな蛇の本性を出して独り言をいっています。
「わしの命も長くない。しかし娘の腹にはわしの子がいる。あの娘が菖蒲湯に入らなければいいが…」

 それを聞いた母親は、さっそく娘を菖蒲湯にいれました。すると、娘の腹から蛇の子がダラダラと落ちてきて死んでしまいました。それからというもの、一年に一度、端午の節句には魔よけの菖蒲湯に入るようになったということです。

ぱの字 URL 2006年05月05日(金)00:03

このお話には、ご存じでしょうが別バーションがありますね。
広島に伝わっているのは、「三月のひな祭りの桃酒、五月の御霊会の菖蒲酒、九月には菊の花祭りの菊酒を飲めば、大丈夫」
という話になってます。
三月と五月と九月にそれぞれ飲む、と言うお話と、三つ纏めていっぺんに飲む、というお話の二通りが伝わっていますが、どっちが元かは私にも解りません。

色々調べていくと、地域差が見えて面白いかも知れませんね。

珍獣ららむ〜 2006年05月05日(金)08:13

 菊の節句にも似たような話があるというのは初めて聞きました。やはり「大丈夫」の内訳は、見知らぬ男にはらまされてもおろせるから……なのでしょうか(^^;?

ぱの字 URL 2006年05月05日(金)09:44

やはり蛇に孕まされるのですが、この三つの酒を飲むと、お腹の子が溶けて出てくる(堕胎する)話になっています。
似たような話でも、いくつかバリエーションが存在するようなので、こういう話は結構あちこちで語られていたのかも知れません。
三つのお酒を飲むと良い、というのを教えるのがカエルとか、蛇の独り言とか、寺の住職とかと様々です。

他の地域ではどうなのでしょうかね?

珍獣ららむ〜 2006年05月05日(金)14:13

 わたしが知ってるのは(たぶん群馬の昔話だと思うんですが)

・いつの間にか通ってくる男の正体が蛇だと気づく
・母親が堕胎法を知ってていきなり菖蒲湯の桶をまたがせる

ってな感じで、理由をまったく説明してなかった気がします。各地のバリエーションを調べると確かに面白そうですね。他のを知ってる方が現れないかしら。

 そういえば、中国では桃の節句を上巳節といって、もともとは旧暦三月上旬の巳の日の行事で……っていうのは記事本文に書いたんですが、その行事というのが「若い男女が河原に集まって身を清めてから楽しく過ごす」というものらしくて、そこでは当然、行きずりの男女がゴールインしてしまうこともあったようです。

 ひょっとしたら、そういう背景も関係してるかもしれませんね、この話。

珍獣ららむ〜 2006年05月06日(土)00:33

怪異・妖怪データベース
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/index.html
ここで「菖蒲」を検索してみたのですが、
蛇婿系の話だと、下のようなバリエーションがあるようです。


◆通い婚型
・見知らぬ男が通ってきて娘がはらむ。男の正体は蛇。
・正体の暴き方は、(1)単純に尾行 (2)針を刺して血のあとをたどる (3)糸のついた針を刺して糸をたぐる……など
・堕胎の仕方は (1)菖蒲やヨモギの湯に入る (2)菖蒲の酒を飲む……など

・蛇に刺した針自体が武器になる場合がある。(1)針を抜いてやるかわりに堕胎のしかたを白状させる (2)針の鉄の毒がまわって蛇が苦しんで死ぬ……など。

・子供は無事に人間として生まれるケースもある。小さな蛇がよってきて仕方がないので菖蒲湯に入って蛇をよける。


◆水乞い型
・蛇に雨を降らせてもらうかわりに娘を嫁に差し出す。
・蛇にはらまされた娘は菖蒲湯に入って子をおろす。

※水乞い型は堕胎話がついてないのもあって、その場合は池にひょうたんを投げ込んで「このひょうたんを沈められたらお嫁に行きます」と言い、蛇が必死になってる間に大量の針を投げて蛇を殺す。菖蒲は出てこないけど小道具の「針」が共通してる。「針」はオオモノヌシの伝説にも出てくる。