[参考資料]センザンコウについて

 
 前のページでは、狸のような姿で陸に棲むという竜魚について、その正体はセンザンコウではないかと書きましたが、その証拠になりそうな、面白い絵を発見しました。

 
広渡湖秋のセンザンコウ
18世紀に描かれたセンザンコウ
(荒俣宏『世界大博物図鑑5 [哺乳類]』より)
 本から取り込んだら見にくくなってしまいましたが、これは18世紀半ばに制作された、広渡湖秋の『鳥獣図鑑』という絵巻物に出てくるセンザンコウだそうです。本物のセンザンコウは首のところにくびれた部分はないですし、くちさきが細くとがっていて、アリクイに似たような形をしてます(餌も同じですしね)。
 ところが、この絵のセンザンコウは、鼻面がほとんどなくて平らな顔してます。長い尾と、体を覆うウロコがセンザンコウっぽいですが、その他の点ではトラか山猫か……とにかく別の獣みたいな形してます。
 もちろん18世紀じゃ『山海経』の時代とはあまりにもかけはなれてるんですが、18世紀になってさえ、センザンコウのイメージがこの程度だったとすれば、2千年も前の時代に「狸のようで陸にすむ鯉」と考えられていても不思議はなさそうです。

 また、荒俣宏『世界大博物図鑑5 [哺乳類]』によれば、センザンコウのことを中国語で龍鯉とも呼ぶそうなので、やはり竜魚=龍鯉=センザンコウと考えてよさそう。


 
 センザンコウの仲間は、アジアのほかにはアフリカにもいるそうですが、アフリカではウロコをヤスリとして使い、肉は現在でも食用にすることがあるようです。しかし、中国ではセンザンコウの肉は「味が悪く毒がある」といって食用にはしなかったそうです。ただし、先日サイトに遊びにきてくれた台湾人のカオルさんによれば、センザンコウは台湾にもいて、食用だったこともあるそうです。どんな味がするのか気になるところですが、現在センザンコウはワシントン条約にひっかかるので日本で食べるのは難しそうですね(何でも食わなきゃ気が済まんのか>珍獣様)。

 食べるのはともかく、あのウロコがどんな手触りなのか、いちど触ってみたいものです。季節の変わり目に生え替わるらしいので、どこかで入手できないものかと思うのですが……

 
 
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