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和名 ニンジン(人参)
別名  
学名 Daucus carota
科名 セリ科
沖縄口 ちでーくに(黄大根)
中国名 胡羅蔔 紅羅蔔 人参
英名 carrot
エスペラント karoto
その他 carotte(仏)
実(種)
備考 食用にするのは主に根で旬は秋から冬にかけて
春にはニンジンの葉も食用にする
原産地 中央アジア

 
 
胡の国から来た大根?
 ニンジンを漢字で書くと人参だが、これは本来はウコギ科のチョウセンニンジンをさす言葉だった。セリ科のニンジンのことは胡羅蔔という。羅蔔とは大根のことで、胡は西域の国々のことだ。

 ニンジンは中央アジア原産のセリ科植物で、今から 2000年ほど前から栽培されている。15世紀にオランダで品種改良が進み、その後フランスでも改良されて現在見られるニンジンのもとができた。

 主に西洋で栽培されていたニンジンは 13世紀の終わりごろ胡と呼ばれる地方から中国に伝わった。胡から伝来して大根のように太い根を食べる野菜だから、胡羅蔔または紅羅蔔と呼ばれ、日本へは戦国時代から江戸時代の初めの頃に伝わったと言われている。この頃は中国式に胡羅蔔と呼ばれており、『和漢三才図会』には赤と黄色のものがあると記されている(参考>創元社『薬になる植物』)。チョウセンニンジンと形が似ていることなどから人参と表記するようになったが、なんの関わりもない植物である。

 中国経由で伝わったものを東洋種、江戸時代末期から明治にかけてフランス等から直接導入されたものを西洋種という。現在ふつうにニンジンといった場合は西洋・短根系の品種のことだ。

東洋系
 長根種(45cm以上のもの)
 中根種(45cm以下のもの)…金時ニンジンなど

西洋系
 長根種(45cm以上のもの)…大長ニンジンなど
 中根種(45cm以下のもの)
 短根種(18cm以下のもの)…一般的なニンジンはこの仲間

 
ニンジンにまつわる言葉・文学作品など
ニンジンの皮は乞食にむかせ、瓜の皮は殿様にむかせよ
 ニンジンの皮は薄くむけという意味。ニンジンは土の中で育つので農薬をかぶることもない。また外側から養分を蓄えるので皮の部分に栄養があって美味しい。不器用で大ざっぱな殿様仕事でむいたのではもったいない。

 同じような言葉に「柿とリンゴはケチむかせて、瓜とスイカは殿様にむかせろ」というのがある。これは柿やリンゴは皮に近いところが甘いのに対してウリ科の果物は中心が甘いということを言っている。

 この手の諺は枚挙にいとまがない。リンゴについては「金持ちにむかせろ」という逆の諺もある。これは皮に近いところは農薬がしみているので厚くむけということだ。似たようなものに「ジャガイモの皮は金持ちにむかせろ」というのもある。芽に毒があるので皮とともにむきとってしまえということだ。

人参のんで首くくる
 この言葉をニンジンにまつわる諺としてとりあげるのは間違いである。この場合の人参とはチョウセンニンジンのこと。
 チョウセンニンジンは滋養強壮効果がすばらしいことからあらゆる難病に効くと言われていた。しかし江戸時代のチョウセンニンジンはほとんど輸入に頼っていたため非常に高価で、人参を飲んで病気は治ったが借金がふくれあがって首をくくって死なねばならぬという風刺のきいた言葉なのだ。

ピーターラビット
 イギリスの女流作家ビアトリクス・ポターによる絵本。1893年に友人にあてた絵手紙をもとに、1901年絵本として自費出版。翌年フレデリック・ウォーン社からメジャーデビュー(っていうのか?)して有名になる。主人公のピーターラビットは作者が小さい頃に飼っていたウサギをモデルだという(参考>World of Peter Rabbit)。
 このウサギが丸かじりしているニンジンのうまそうなこと。真似して生かじりしたことのある人は多いのではないかと思う。なお、ピーター御用達のニンジンは、現在よく見る先まで太いものではなく、先が細いニンジンであることも見逃せない。

 
 
珍獣様が食されたさまざまなニンジンたち