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信州は昆虫食王国

 伊那旅行のつづき、昆虫食のつづきです。

 伊那といえば昆虫料理ですが、ザザムシや蚕の蛹で佃煮を作って売っている有名な会社があります。伊那インターを降りてすぐのところにある、有限会社かねまんです。

 出発する前に、昆虫料理のえらい人 bugeater さんに伊那のおもしろいところを質問したら、かねまんは製造だけじゃなく売店もやっているので是非行くべきということでした。>bugeaterさんのブログはこちら

 なんでも店のとなりに食堂か料亭のようなものがあるので、そこでも昆虫料理を食べられるのではないかとおっしゃるのです。これは期待がふくらみます。

かねまん

 かねまんは、こんなお店でした。長野の名産品を売るおみやげ屋さんをやっていて、おおきく看板も出ているのですが、知らないと通り過ぎちゃいそうな感じですね。売店の裏に工場があって、昆虫の佃煮はそこで作っているということでした。

 昆虫の佃煮は、夏はシーズンオフで品薄になっているということでした。ザザムシにしても、イナゴにしても、収穫は秋なんだそうです(そういえばそうだわ)。去年は不作で材料のストックがあまりないのだともおっしゃっていました。

 それでも、ザザムシ、かいこ(蛹)、まゆこ(成虫)、イナゴ、蜂の子(クロスズメバチ)など、佃煮や大和煮の缶詰・瓶詰めが並んでいましたので、ひととおり購入しました。

昆虫の佃煮いろいろ@伊那

 右のカラフルな缶(花九曜煮)だけは別の店で買った物です。ほかは全部かねまんで買いました。

 缶詰は大と小があって、小は 1缶で 500~700円程度だったと思います。蜂の子の瓶詰めは 1680円でした。昆虫は意外と高級品なのです。養殖技術がないからだと思われます。

 さて、期待している「食堂か料亭」ですが、お店をキョロキョロしても、それらしい気配がありません。最初の写真で、屋根に喜多方ラーメンの看板がありますが、確かに隣は飲食店でした。でも、あくまでラーメン屋さんであって、昆虫とは関係なさそうなのですよね。

 せっかくここまで来たのでお店の方に「料亭か食堂をやっていると聞いたのですが?」とたずねたら、

「そういうことはしていませんねー。隣はあくまでテナントで、うちでやっているわけではありません」

と、おっしゃっていました。

 それからお店の人は、おとなりの店の苦難の歴史を語り始めました。最初は信州そばの店だったそうです。ところがそばを打ってくれる職人が山の向こうにいるというのです。今ならばいいけれど、平成元年だったものだから音を上げて、とうとう喜多方ラーメン屋になってしまったというのです。

 平成元年だと何がいけないんだと思ったら、当時は山にトンネルがなく、山を迂回するので二時間以上かかったというのですね(たぶん片道で)。職人さんのところに日参するには遠い距離です。

 だったらそば打ちを習うとか、近場に別の職人さんを探せばよさそうなものなのですが、どういうわけか喜多方ラーメンの職人さんをつかまえてラーメン屋さんに転職、今日にいたる、ということでした。

 昆虫料理にはありつけませんでしたが、ドラマチックな伊那事情をかいま見た気がします。

 でも、どうせやるなら喜多方(福島)じゃなく、長野系のおいしいラーメンをやったら観光客が足をとめそうなのに、ね??

◎かねまん
http://www.kaneman1915.com/



 閑話休題。
 昆虫食のお話です。

かねせん@伊那市駅前

 伊那市駅の近くにこんな店もありました。かねせんという店名で、覗いてみると、昆虫の缶詰を沢山並べています。ぱっと見た感じ、この店にあるのは花九曜煮(はなくように)など原田商店という諏訪市の会社のものばかりでした。

 とても気になる店ですが「ご用の方はお電話ください。電話代はお返しします」と書かれた張り紙があり、お店は閉まっていました。

 原田商店も蜂の子では有名なメーカーらしいんです。なんでも昭和天皇が蜂の子の佃煮をいたくお気に入りで、ご病気で倒れられた際にも蜂の子をご飯にまぜたのを召し上がられたとか。

http://uncletell.cool.ne.jp/infoseek/mg19c.htm
 こちらのサイトによれば、陛下が蜂の子を召し上がると報道され、原田商店に問い合わせが殺到したということです。宮内庁に納められていた蜂の子はこの会社のものなのでしょうか?

賜天皇御愛用の栄、花九曜煮
▲缶詰にも天皇ご愛用の栄誉を賜ったと書かれています。この缶詰は、信州大学農学部近くにあるスーパーで買いました。

 原田商店の花九曜煮は意外と普及しています。かねまんの品はスーパーにはありませんが、原田商店の花九曜煮は複数のスーパーでみかけました。

◎原田商店(諏訪市)
http://www.tamatebako.ne.jp/harada/

 
◎かねせん(伊那市):通り町商店街の店舗案内
http://www.inatown.com/joho4.html
ここのずーっと下の方。


 さてさて、買ってきたものは、もちろん美味しくいただくつもりです。どれもこれも、bugeater さんの集まりで試食させてもらったことがあるので、美味しいのは折り紙付きなのです。

 高級品なのでいっぺんにはあけられませんから、とりあえず蜂の子の瓶詰めの写真など掲載してみます。
かねまんの蜂の子

 これは「かねまん」の蜂の子です。上品な味に仕上がっていて、本当に美味しいです。酒の肴にもいいでしょうが、炊きたてご飯にのっけて食べるのがいちばん美味しいですね。




 そんなこんなで、伊那市には本当に昆虫食文化があるようです。ただ、今となってはどうしても高級品なので、どれくらいの人が日常的に食べているのか気になるところです。

タグ:昆虫食

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一円 2010年08月22日(日)09時42分 編集・削除

 蜂の子おいしそうですね。
 あまりにも高くなってしまって、最後に食べたのは25年も前のことだったような。缶詰の容量の比較が出来ませんが、その時に買ったものがやはり同じくらいの値段でした。
 松本市内で買ったのだけど、やっぱり伊那の方が少しは安いのかも。

 ゲンゴロウの卵の話はご存知かと思います。今じゃ相当に減少しているということだから、これを取って食べたら顰蹙ものでしょう。
 とある地方で正体を知らないまま水辺の草の茎に付いた卵を集めて食べていました。ところがこれがゲンゴロウの卵だということが明らかになった途端、食べる人がほとんどいなくなったとか。

珍獣ららむ~ 2010年08月22日(日)10時57分 編集・削除

 ゲンゴロウの卵のことは知りませんでした。食べる地方があるのですかー!

 正体を知って食べなくなったのは、虫の卵だからなんですか? 知らずに昆虫食をしてたなんて、面白いものですねー。

一円 2010年08月22日(日)21時28分 編集・削除

 この話は『彩色江戸博物学集成』(平凡社。雑誌「アニマ」への連載をまとめたもの)に出ていたと思います。
 食べていたのは昭和初期だったか、大正頃だったかまで、場所は主に東北地方だったと思いました。本が姉のところに行ったきりなので、確認できません。

 今年は庭のところどころにセミが抜け出た小さな穴がぽつぽつ。抜け殻も十以上はあったかも。
 昨夜辺りからやっと虫が鳴き始めました。いつもよりずっと遅いのは暑さのせいでしょうか。

珍獣ららむ~ 2010年08月22日(日)22時24分 編集・削除

 ありがとうございます。本は図書館で探してみます。

 今年はセミも例年より数日遅かったようなので、秋の虫もやや遅れ気味で鳴き始めたのかもしれませんね。

 ただ、夏の暑さに影響されてるかっていうと、ビミョーですよね。暖かければかえって成長がはやまって早めに鳴き出したりしないのかな。

 もしかすると、卵から出てくる瞬間にタイミングがずれてる可能性があって、だとしたら冬にちゃんと寒かったか、春先から初夏にかけての気温や日照時間なんかが影響しているかもしれません。