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けば取り、そしてずりだし

 気温はそれほど高くないんですが、太陽の南中高度が下がってきたので部屋の中まで日がさすのでまぶしいわ暑いわ大変です。確実に地球の位置が変わってるってことなので、ある意味ものすごく秋を感じます。

二度目のお蚕さんは四眠中です

 昨日から最後の眠に入ってます。真夏の蚕は眠が短めで想像より高速で脱皮してましたが、秋の蚕はしっかり時間をかけて脱ぐようです。鼻先に頭の殻をひっかけたまま、スフィンクスのポーズでじーっとしてます。

 前回は五齢になってから病気を出してしまったので、勝負はこれからです。横着せずにこまめに餌をやって頑張ろうと思います。今回は五齢の間に遠出しないように考えて卵の注文をしたので、たぶん大丈夫です。

蚕が繭を食べる?

 ところで、前のお蚕さんの繭ですが、冷蔵庫で冷やしっぱなしなので、中身は死んでないんです。このままではよろしくありません。きれいな繭ばかり集めておいたはずなのに、よく見るといくつか染みになってる繭がありました。おそらく、中で羽化して外へ出てくることもできずに死んでいるのだと思います。染みは、羽化後に必ずする尿でしょう。

 そういえば、先日ぐんまの絹展で「繭になったら、すぐに熱で虫を殺してしまわないと、中から繭を食べてしまうのよ」という話を聞きました。繭の中で、蚕は蛹になります。蛹でいるかぎり繭を食べるなんてことはあり得ません。でも、羽化すると外へ出るために繭を破ろうとしますから、その状態を「食べる」と言うんだと思います。

 うちの繭もそうとう食べられちゃってると思うんです。冷蔵じゃなく、冷凍しちゃえばよかったかなあ、なんて思ってみても後の祭り。農家では熱処理するんですけど、自宅では中の虫が完全に死ぬほどの高温で、なおかつ繭の色つやを損ねない温度での熱処理なんて、どうしていいかサッパリわからないし。まあ、これからは繭になったらなるべく早く糸にしちゃえばいいんですよね。

 というわけで、思い切って糸にすることにしました。
 

けばとり

 「毳取り」もしくは「毛羽取り」という字をあてると思います。蚕の繭は、足場にするための粗い網に包まれた状態になっています。この粗い網を「けば」と言います。糸を引くには、このけばをとってやらなければいけません。

ファイル 453-1.jpg
▲繭は「けば」につつまれています。

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▲けばを剥いてやると、きれいな繭になります。

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▲毛羽も立派なシルクなので、うまくすると紡ぐことができるはずですが、不器用なのでわたしには無理でーす。そもそも糸にするほどの量はありませんでした。でも捨てたらもったいない。水をふくませると脱脂綿のような状態になるので顔を洗うのに使おうと思います。

さて、どうやって紡ごう?

 座繰り器は使える状態ではないので、紡ぐとしたら毛糸用の玉巻き器を使わなきゃいけないのですが、前回、土産物屋で購入した繭で実験してうまく行かなかったのがトラウマになっています。プロの手業を見てからと思っていたのに九月の群馬行きは延期になってしまったし。

 こうなったら当たって砕けろです。いちおう玉巻き器を用意して、まずは繭を煮てみましょう。ときおり水を差して温度差を作りながら5~10分煮ると糸端が出てくるはず……

 …はず、なのに。あらー、糸端が出るどころか繭全体がぐずぐずにほどけてきましたよ。煮すぎた?

 というわけで予定変更。ひろこさんにおしえてもらったずりだしでやってみることにしました。ほぐれかけた繭を水にとり、おしえてもらった方法では真綿にして乾かすことになっていたけれど、ほぐれて絡み合っているので、ええい、もうこのまま引いてしまえ!

 ここらで写真が欲しいところですが、そんなものはありません。なんせひとりでやっているので作業だけでいっぱいいっぱいなのです。写真とか無理。

 ずりだしというのは、ほぐした繭をはしっこから引っ張って、出てきた糸の束に軽くよりをかける方法らしいです。この方法で糸を作ってる場面をまったく見たことがありません。そう言われて見ると、太さが均一ではない毛糸のような糸で織った絹製品を見たことがありますが、おそらくずりだし法でとった糸なんだと思います。

 やってみると、思ったより簡単でした。ほぐれかけた繭からは、ちょっとひっぱるだけで糸が出てくるし、丈夫なので滅多に切れません。切れないからこそ細くなりすぎて「きゃー」って感じですが、なんとか頑張りました。次の繭とのつなぎ目は、手でしっかりよりをかけると自然に繋がっちゃうみたいだし。

ファイル 453-4.jpg
▲ずり出し法でとった糸。もうちょっとやわらかいものができるかと思ったんだけど、いくらか固い感じです。ずりだしでやるならもうちょっと煮るか、きちんと重曹をいれたほうがいいですね。

 糸をとったあとに、繭の中身が残ります。やっぱりほとんどが羽化してました。それも、かなり不完全な感じでした。病気の出た蚕なので食べるのはやめときました。


 今月のいつだかに、中之条の天蚕工房に行こうと思っているのですが、なかなか予定がたちません。雪が降る前に行けるといいなあ。

タグ:カイコ 手芸

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ひろこ 2008年10月04日(土)00時29分 編集・削除

ほんとに「やればできる」だったね。
これこそがホンモノの手紡ぎ糸って感じだね、きれいだ。

Sari 2008年10月04日(土)01時16分 編集・削除

ほんと、きれいですね! 何が出来るのかしらん・・・(^^)

ここに、お蚕様のために働く猫のことが出てました。
http://www.kashiwashobo.co.jp/pages2/rensai/r05-08.html
ご存知だったかな?

珍獣ららむ~ 2008年10月04日(土)07時25分 編集・削除

 実は写真に写ってる糸は特別綺麗にできてる部分で、だめなところはそーとーダメな状態です。でも、コツはつかめてきたので何度もやってるうちにもうちょっとマシになるでしょう。記念に何か作りたいとは思うんだけど、何を作ろうかなあ。

 オキヌサンは知ってたけど、猫石の話とかさまるっきり知りませんでした。祖母の家では猫も犬も飼ってなかったです。たまにねずみ取りにひっかかったドブネズミを家の前の用水路に沈めて殺してましたが、そんなんで間に合っていたのかなあ。