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影向の石〜伝説の宝庫、善養寺(江戸川区)〜

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▲影向の松(ようごうのまつ)

 江戸川区東小岩に善養寺(ぜんようじ)というお寺があります。そこには上の写真のような立派な松があって、影向の松と呼ばれています。影向というのは仏様のお姿のことだそうです。一本の松が枝をのばし、屋根のように地面を覆っています。大正15年には東京都の天然記念物に、平成23年には国の天然記念物に指定されました。

影向の石の伝説

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▲影向の石

 その立派な松の足もとに、こんな石があり、影向の石という立て札が立っています。『江戸川区史』によれば、この石は泥棒を捕まえたことがあるそうです。

 昔この寺の不動堂に泥棒が入り、仏具などを背負って逃げようとしました。松の根元に石があったので、ひょいと足をのせたところ、ぴたりとくっついて離れなくなりました。

 そこへ不動明王が現れて、泥棒の胸元に宝剣をつきつけて、二度と悪事を働いてはならんとさとしました。仏様じきじきのお叱りです。さしもの悪党も涙を流しながら許しをこいますと、足が石から離れて、仏様も姿をお消しになりました。

 今でもこの石は松の木の下にあって、泥棒が足がかけたところがくぼんでいるということです。


 善養寺には他にも沢山の伝説が残っていて、伝説のマーケットなどと呼ばれることもあるそうです。

星降りの松

 善養寺の仁王門の内側に、星降りの松があります。影向の松とは別の木です。今あるのは二代目で、初代の松は昭和の初期に枯れてしまったそうです。

 ある時この寺の和尚が虚空求問持法という修行をしていたところ、天から星が降ってきて松の木の枝にとまって輝きました。

 修業中に星が降ってくるという話はよく耳にすることです。空海の伝説にも瞑想中に金星がおりてきて口から入ったとあります。

 善養寺の伝説では、その光を村人たちも目撃し、拝んだとあります。また、その星の光は三粒の石になり、青、赤、黄色に輝いたと言われています。

 このうちふたつは失われてしまいましたが、青色の石だけは今でも寺の宝として大事にされているということです。ほんとうなら拝見したいものですが、公開はされていないようです。

 この伝説から、このお寺の山号を星住山と言うようになりました。

袖掛けの松

 むかし、江戸川で若い娘の水死体が上がりました。死体をみつけた漁民は、娘を善養寺に葬りましたが、それからというもの、境内の松の根元に娘の霊が現れるようになりました。

 寺の和尚さんが霊に話を聞いたところ、家がまずしく嫁入りの準備もできなかったので川に身を投げて死んだというのです。

 そこで和尚さんは江戸晴れ着を買ってきて松の木の枝にかけてやりました。すると娘の霊は火の玉になってどこかへ飛んで行き、あとには白い小袖が残されていたということです。

 その松がどれなのか、お寺にはなんの案内もなかったので、今は残っていないのかもしれません。ただ伝説だけが残されています。三代将軍徳川家光の頃のお話だと言われています。

むじな磬(むじなけい)

 磬(けい)というのは打楽器です。石の板を吊るして木づちで叩くと良い音がします。仏教ではお経を読む時に磬を叩くことがあります。

 ある日、善養寺の和尚さんが寺の近くにある丘でむじなの死体をみつけました。むじなというのはタヌキのことか、あるいはアナグマか、ハクビシンか、そのあたりの小獣のことです。

 和尚さんは獣とはいえ、こうしてみつけたのも何かの縁であろうと、むじなの死体を手厚く葬ってやりました。この時、土の中から出てきたのが むじな磬 です。

 この磬を叩きながらお経をあげると、不思議なことに沢山のむじなが集まってきます。集まってきたむじなたちは、みな手をあわせて仏様を拝むようになりました。

 それから数年後、寺の近所で大火事があり、もう少しで寺も焼けそうになりました。この時和尚さんが磬を叩くと、むじなたちが大勢現れて火事を消してくれたということです。
 

不動掘りのどじょう

 善養寺は真言宗のお寺です。この寺の賢融和尚は非常に徳の高いお坊さんでした。ある日、禅宗のお坊さんがたずねてきたので、二人でどじょう鍋をつつきながら、般若湯(お酒)を飲み、語り合いました。

 そのうち良いがまわってきて、些細なことで言い争いになってしまいました。禅宗のお坊さんが怒って「おまえは偉そうなことばかり言っているが、それなら鍋のどじょうを生き返らせることができるのか」と言いました。

 すると賢融和尚は涼しい顔で「できるとも」と言うと、箸でどじょうをつまみあげ、お経をとなえて目の前の掘りに投げ込むと、どじょうは生き返って泳ぎはじめたということです。

雨の植木市

 善養寺では毎年三月下旬に植木市が立ちます。これは江戸時代から続いているそうです。ある時、植木屋が白い蛇をみつけましたが、白蛇が弁天様のお使いであることを知らずに殺してしまいました。すると一天に和歌にかきくもり雨がふりはじめました。

 それからというもの、毎年植木市の頃には必ず雨が降ると言われています。



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 善養寺は 東京都江戸川区東小岩2-24-2 にあります。小岩駅から京成バスの江戸川スポーツランド行きに乗って江戸川病院前で下りると近いです。車で行く場合は参拝者用の無料駐車場があったと思います。

タグ:地元(葛飾周辺) 伝説

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