記事一覧

石越駅と石森町、石ノ森章太郎ふるさと記念館


 あまり面白い写真を撮っていなかったんですが、とりあえずスライドショーにしてみました。石ノ森先生の生家って中も撮影していいんですかね。撮影禁止だと悪いなーと思って、いつも写さないんですけど。


http://q.hatena.ne.jp/1268974538/256910/#i256910
以下は上記ページに書いたものを加筆修正しました。

 2010年3月のこと、漫画家の石ノ森章太郎さんゆかりの地を見てきました。

 石ノ森章太郎ふるさと記念館は、宮城県登米市にあって、JR石越駅が最寄りです。そこからバスでひと山こえて30分くらいかかるのですが、そのバスが日に4往復しかありません。9時19分の次は13時49分です。

 こんな本数の少ないバスに誰が乗るんでしょう。田舎のひとなら自動車を持っていそうだから、きっと誰ものらないんだろうなと思っていました。ところが、出発の10分も前からご老人が6人くらい集まってきて、どこに何をしにいくのかわかりませんが、みなさん顔見知りです。

 3月だというのに、前々日に雪がふって、あたりは雪景色です。空を大きな鳥が編隊を組んで飛んでいくのが見えました。やけに大きな鵜(う)がい たものだなと寝ぼけたことを考えていたら、土地のお婆ちゃんが「まだ白鳥がいるね」と言いました。そうか、ここは東京じゃないんだ。カワウだなんて口走 らなくてよかったと思いました。

 やっと来たバスに乗って記念館に向かいます。どこまで行ってもいなかの道でした。途中に小さな町がなくもないんですが、人が住む場所より農地のほうが広いようなところです。

 それでも途中からお客さんがどんどん乗ってきます。運転手さんが「車内混み合ってきましたので、お年寄りに席を譲ってください」とアナウンスすると、若い人が何人か席を立ちました。次のバス停でお年寄りが乗り込んできて、バスはすっかり満員です。

 記念館に近づいてくると、バス停に「石森(いしのもり)」という地名が増えてきます。石ノ森章太郎というペンネームのもとになったのがこの地名だそうです。わたしは記念館前でバスを降りました。

 ふるさと記念館は、そんなに大きくない施設です。石ノ森先生の肉筆原稿や、ゆかりの品などが展示されており、漫画やビデオを自由に閲覧できるコーナーがありました。漫画に夢中になりさえしなければ30分くらいで見てまわれるような感じです。

 実はすぐ近くに、石ノ森章太郎さんの生家があって、そっちも重要な展示物です。木造の古い家で、昔はお母さんが商店をしていたそうですが、今は住む人がなく、今は市が管理しているということでした。

 ごめんください、と戸をあけると、ボランティアの老婦人が「どうぞどうぞ」と招き入れてくれました。てっきり、受付をしているだけなのかと思ったら、一緒に家の中をまわっていろんな話を聞かせてくれました。

「昔はこのあたりは大きな町で、店が沢山あって、七夕や……わたしたちは "たが祭"というけれど、たか祭(高祭?)というのをやって、本当に賑やかだったんですけどね。わたしの弟が、七夕で一番楽しみなのは、小野寺さんち(石 ノ森章太郎の本名)のだと言ってましたよ。章太郎さんは遊び好きで、器用で、頭がよくて、ちょうどこの二階から下を通る人を見ていて、滑車を使って七夕の 飾りをがしゃんと落として人を驚かせたりしたものです。今は年寄りばかりの町になってしまって……」

 その人は他にもいろんなことを話してくれました。今日はいないけど章太郎さんの先生だった人もボランティアで来ることがあるとか、あっち の食堂のオーナーは、章太郎氏の弟さんだとか……当たり前のことですが、ここは本当に石ノ森章太郎のふるさとで、生の章太郎君を知っている人が大勢いるんですね。

 本当のことを言うと、来てみるまでなんの期待もしてなかったのです。どうせ間に合わせで作った記念館があって、ゆかりの品が展示されてるだけだろうと思っていました。

 ところがそうじゃない。ここにあるのは、ふるさとそのものの展示です。石ノ森章太郎を直に知っている人、話したことがある人が住んでいる町で、しかもそういった 人たちと語らえる場所でした。

 帰りは電車の都合でタクシーに乗ることにしたのですが、記念館のお姉さんが「タクシー会社はすぐそこにあるので、もうすこし記念館を見ていてください。電車に間に合うようにお呼びしますよ」ってとても親切にしてくれました。

 ほんとうに来てよかった、そんな風に思える旅でした。


 それから一年後の2011年の2月、もう一度ここを訪れました。残念ながら前回いろいろ話してくれたおばあちゃんには会えず、生家にはお爺ちゃんたちが何人かいて、何か作業をしていました。みなさん親切で、いろんなことを話してくれるのですが、すこし訛っている上に滑舌がわるく、残念ながら三分の一も聞き取れませんでした。

 前回は一人旅でしたが、この時は友達をつれていたので、去年聞いた話を代わりにしてあげました。それから町をひとまわりして、石ノ森章太郎が子供の頃に遊んだ神社や、できたばかりの公園(V3がいる)も見ることができました。

 なんとなくこの町が気に入ってしまい、いつかもう一度来てみようかな、なんてことを考えながら石森町を後にして、友達の車で石巻に向かい、萬画館を見て帰りました。石巻市と萬画館の話はひとつ前の記事を見てください。

 大地震はそれから一ヶ月後のことです。幸いにも生家と売店に一部被害が生じたほかは、展示も無事、スタッフのみなさんもご無事ということでした。

 いつかきっともう一度行きます。いつも遠いところに宿をとってしまうので、今度はもっと近いところに一泊しようと思っています。

◎石ノ森章太郎ふるさと記念館
http://www.city.tome.miyagi.jp/kinenkan/

↓ここも少し気になる!
◎チャチャワールドいしこし
http://www.chachaworld.jp/toppage.html




より大きな地図で 石巻と石森町と田代島 を表示
位置関係がわかるように地図を作りました。
赤:旧石森町のふるさと記念館
青:石巻市の萬画館
緑:マンガアイランド田代島(ここは行ったことがない)

タグ:2011年2月東北旅行

トラックバック一覧

コメント一覧

Goudeau 2011年03月27日(日)00時35分 編集・削除

TVの津波後の空撮で、川の中洲のやうな場所の記念館が写つてゐました。かなり危険な立地のやうですが、被害が少くてなによりでした。サリン事件の一ヵ月前、国会図書館に地下鉄で通つて、シナ考古学雑誌をコピーしまくつてゐた事を思ひだしました。

珍獣ららむ〜 2011年03月27日(日)07時27分 編集・削除

>川の中洲のやうな
その中洲がマンハッタン島にそっくりなので、マンガッタンという愛称を付けたんだそうです。
ほんとによく無事だったものですよね。

サリン事件…
わたしも、最寄りの駅に止まる電車が千代田線のつづきです。
あの日電車に乗ってたら今ごろブログなんか書いてないかもしれないですね。