シュウシュウ魚  シュウシュウ
シュウシュウ魚
 水中にシュウシュウの魚が多く、そのかたちは鵲(かささぎ)のようで十枚の翼があり、すべての羽の端にウロコがあり、その声は鵲のよう。火をふせぐのによく、食べれば黄疸にならない。(北山経一の巻)

絵・文とも『山海経』より


 
 『山海経』本文では魚とされているし、挿し絵でも本体は魚のように描かれているので、まずは水棲生物をうたがってみよう。

 翼の生えた魚といえばトビウオだが、トビウオには十枚も翼はない。では、ミノカサゴなどはどうだろう。胸ヒレと背ヒレを華やかにひろげている様子は、翼がたくさんあるように見える。
 けれど、なにかピンと来ない。トビウオにしても、ミノカサゴにしても、本体はあくまで魚なので、カササギのような姿だと言われれる必然性を感じないのだ。

ミノカサゴミノカサゴ
 背ヒレに毒のある刺があって、刺されると失神するほど痛いらしい。日本各地・太平洋西部・インド洋の温帯から熱帯の岩礁に棲息。珍しい魚ではないが、魚は腐りやすいので古代中国人にとってクジャク以上に未知の生き物かもしれない。
インドクジャクの羽インドクジャクの尾羽
旺文社の野外観察図鑑5『鳥』より
 ほんとはずるしないで絵に描こうとおもったんだけど、いざ鉛筆を握ったら、クジャクの羽がどんなんだかわかんなかったのじゃ。
 うにゅう。これって分解するとどういう形になってるんだっけ? 
 そこで鳥にも目を向けてみよう。先端にウロコのついた羽といえば真っ先に思いつくのは孔雀だ。
 孔雀には、インドやスリランカに棲息するインドクジャクと、中国南部から東南アジアに棲むマクジャクがいるが、どちらにしても中国では孔雀の羽は貴重品だったらしい。『山海経』の時代よりずっと後のことだが「孔雀の羽根飾りのついた帽子をかぶる人」といえば、かなり高い地位の役人のことを意味する時代もあったようだ。
 おそらく、高貴な人の服や帽子の飾りとして、尾羽だけは目にすることがあっても、ほとんどの中国人は生きた孔雀を見たことがなかっただろう。まるで、鱗のような模様の羽を持った鳥なので、魚のように水の中に棲んでいると想像したのではないだろうか。

 

前ページへ目次へ次ページへ