住吉大神の化身
 
 
 むかし、神功皇后が新羅の国との戦いからもどってきたとき、身のたけ十丈もある大きな牛のばけものが海から出てきて、神功皇后の船をしずめようとしました。

 すると、船のりの中から見なれない老人がすすみでて、牛の角を両手でつかむとぽーんと海にころばしました。たおれた牛の胴体は前島に、首は黄島、しっぽが青島になったといわれています。

 のちの人はこの場所を、牛をころばしたところなので、牛まろばしとよぶようになり、そのうち変化して、牛窓(うしまど)とよばれるようになりました。

 ところで、牛をなげとばした老人はだれでしょう。身のたけ十丈といえば三十メートルということです。そのような大きな牛を素手でなげとばすのは人間であるはずがありません。海での安全を守る住吉の神の化身であったといわれています。
 

 
◆こぼれ話◆

 神功皇后は仲哀天皇のお后で、夫が死ぬと女だてらに鎧をみにつけ、新羅の国にせめこむというスーパーウーマンだった。戦いから帰ると応神天皇を生み、69 年もの間摂政をつとめた。

 住吉の神は底筒男命(そこつつのおのみこと)・中筒男命(なかつつのおのみこと)・表筒男命(うわつつのおのみこと)のことで、海上の守護神、外交の神、和歌の神とされる。住吉神社は各地にあるが、その中心となるのは大阪の住吉大社で、ここにはのちに神功皇后もまつられた。

 牛窓の由来になった「牛まろばし」を、神功皇后自身の威光におされて牛が勝手に転んだとする話もある。

   参考>現地の地図
 

 
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