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和名 アブラゼミ(油蝉)
別名  
中国名 油蝉
科名 セミ科
学名 Graptopsaltria nigrofuscata 
出現期 東京では7月中旬から8月末まで
食性  樹液を吸う 
採集地 東京都葛飾区


 
アブラゼミ
2004年8月16日撮影

 そろそろアブラゼミの声が聞こえる頃かなあと思っていたら(注:7月中旬です)、鳴き声を耳にするより先に本体が来てしまいました。部屋に飛び込んで来たのです。

 アブラゼミって他のセミとくらべてマヌケっぽくないですか? ニイニイゼミやミンミンゼミは木の高いところで鳴いてるから、本体を見るチャンスが少ないでしょう? でもアブラゼミは人の手のとどくようなところで平気で鳴いてたりするんです。しかも、手づかみで簡単にとれちゃう。この虫にはチョウやトンボみたいに「何か近づいて来たから逃げる」というような注意深さを感じません。

 ひょいっと手づかみにしてやりました。せっかく捕まえたので木にとまってる状態では見えない部分も見てみましょう。

アブラゼミ顔面写真
2004年8月16日撮影

 これは、カッコイーって人と「ぎゃぁぁぁぁぁ!」って人の両極端にわかれそうですね。わたくしとしては、かなりイケてる気がするんですけど。

ここがウルサイんです
2004年8月16日撮影

 アブラゼミの腹です。蝉の仲間は腹で鳴きます。
 腹の中に発声器というものを持っていて、腹の筋肉を動かしてバリバリっと音を出すらしいです。
 鳴き声はメスを呼ぶための道具なのでオスだけが鳴きます。写真のものは尻の先端に腹弁があるのでオスです。捕まえたらバチバチものすごい声で鳴いてました。

 そうそう、セミと言えば抜け殻ですね。

 東京あたりだと、そこいらに転がってる抜け殻はほとんどアブラゼミです。

アブラゼミの抜け殻
2003年8月6日撮影
 大きくて丸っとしてて茶色いのが特徴

 ちなみに、セミは半翅目(カメムシ目)というグループに属する昆虫で蛹(さなぎ)になりません。蛹になる生き物は幼虫時代と成虫の姿がまったく違いますが、セミの幼虫(または抜け殻でもいいんですけど)をよく見ると、背中に小さな翅(はね)がついてますよね。セミは幼虫時代から成虫と同じような姿をしてるんです。セミのように幼虫からいきなり成虫になることを不完全変体といいます。蛹にならない虫は不完全変体です。

 セミは幼虫のまま土の中で何年も暮らして、時が来ると地上に出て最後の脱皮をします。いわゆる「セミの抜け殻」は、セミが成虫になる前に脱いだ最後の皮というわけです。抜け殻は茶色くなっていますが、地上に出てきたセミの幼虫は白くて柔らかい体をしています。

 わたくし、脱皮前のセミの幼虫を素揚げにして食べたことがあるのですが、マメ科の植物のような、はたまた大根のようなといいましょうか、植物的な香りがして美味しゅうございました。昆虫記を書いたファーブルも脱皮寸前の白い幼虫を捕まえてフライにして食べたと書き残しています。

アブラゼミの羽化
2004年8月4日撮影
アブラゼミの羽化
通りがかりにみつけた羽化途中のアブラゼミ
この段階になると抜け殻は茶色く変色している

アブラゼミの羽化
翅のところまで抜けた

アブラゼミの羽化
枝から足をはなしてお尻だけでひっかかってる。
この宙ぶらりんの状態が長く続くみたい。
足を固めているのかな?

アブラゼミの単眼と複眼
2003年8月22日撮影
複眼(大きい目玉)は緑色。
眉間の単眼は赤くて三つ。

アブラゼミの横顔
2003年8月22日撮影

 アブラゼミは7月中旬に鳴き始めて、8月中はうるさいくらいに鳴き続けます。五月蠅いと書いて うるさい と読みますが、8月に関しては「八月油蝉い」という字をあてたくなるほど。それが9月になるとピタッと鳴き止むので不思議です。


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