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映画『ナルニア国物語』

 そうだ、何か書き忘れていると思ったら、日曜に映画を見に行ったんだった。

 3月3日(金)に隣町の亀有にアリオという大きなショッピングモールができて、その中にMOVIXという映画館も入りました。葛飾区は映画館がダメなところっていうか、ダメになってしまった町で、昔は青戸や金町に映画館があったのに全部潰れてしまって、映画館が一軒もない状態が長くつづいてました。

 ほんとは開館初日に見るはずだったんです。ところが映画館の前まで行ってみたら、お目当ての『ナルニア国物語』は4日封切りだって書いてある。しまった、一日早かったか。

 開館サービスかもしれないけど、「男はつらいよ」と「こち亀」のアニメ映画&実写映画(せんだみつお主演のやつ)を、それぞれ500円で上映してたりしました。どれも葛飾関連の映画です。こういう古い映画の再上映は面白いから定期的にやってくんないかな。寅さんなん沢山あるわけだし、葛飾関連じゃなくてもいいしね。

 お目当ての映画はやってなかったので、完成したばかりのショッピングモールをふらふらしてその日は帰りました。イトーヨーカドーとその他の専門店がたくさん入ってます。ヨーカドーの大店舗+専門店街といえば南葛西や木場にもあるのですが、あちらよりも入っている店がオシャレな感じで、どちらかといえばイクスピアリやヴィーナスフォート、あるいは船橋のららぽーとに近いような感じです。できたばかりなので仕方ないけど、駐車場待ちの車で環七が麻痺しかけてました(アリオは環状七号線沿いにあります)。

 というわけで、日を改めて5日(日)に出直しました。なんせ隣町なので見に行くのも簡単です。なんせ根性入れると歩けてしまうんですから……って、それ南葛西に住んでたときにイクスピアリでも同じネタを言ってた気がするんですけど、今度はもっと近いんですよ。こんな近いところにシネコンができるとは思ってもみなかった。さすがに歩かないで電車使うんですけどね。一番遅い上映を見ても終電あるし。

 そんなこんなで、完成したばかりの映画館で『ナルニア国物語』を見ました。原作は昔から大好きで、ファンタジーなら指輪よりナルニアでしょと、ことあるごとに言ってたら、こっちも映画化されてちょっとびっくり。いや、イギリス人が作るっていうんならともかく、ハリウッド映画だっていうから、いかにもアメリカ人が好むスペクタクルとコメディーにされてしまうんじゃないかと不安でした。

 でも、実際見てみると、これが意外にも悪くない。ナルニアの王となるべき四人の子供たちなんか、どいつもこいつも表情は可愛いんだけど不細工! けなしてるんじゃなくて褒めてます。長男のピーターなんか、たぶんわざと野暮ったく見えるようにしてるよね(公式サイトにピーター役の子のページがあるけど、そこにある写真で見ると美形だし)。学童疎開で田舎に引き取られた普通の子供たちが主人公なので、美少女や美少年がでてきたら台無しなんです。戦いのために武器をとっても、みんな強そうじゃない。なんとなく頼りない手つき。でも基本的な武器さばきや作法は知ってるのね。イギリス人っていう設定だから、みんなアーサー王とかの騎士道物語を読んで知ってるわけよ。そんなイギリスの子供事情が垣間見られるところがいい。

 白い魔女も美女を用意しなかったところが個人的にはお気に入りだなあ。あれは美女にしちゃったら別の話だよね。薹がたった感じのオバサンが、雪山の洞窟みたいに真っ暗な丸い瞳でじーっとこっちを見るから、なんともいえないゾクゾクした雰囲気をかもし出すんだと思う。

 エドマンドのバカっぽさもたまらない(っていうか原作どおりだ!)。彼はおろかな人間の象徴だし、庇護されていることのありがたみを知らない子供の象徴だったりするから、最初のうちはなるべくバカっぽくて、見ているこっちが「あんた、だまされてるに決まってるじゃないの!」と露骨に思うようなキャラじゃなきゃいけない。ナルニアの世界は聖書の物語をなぞっているのね。最初の人間であるアダムが食べてはいけない木の実を食べたことから、その子孫である人類が不完全なものになってしまうんだけど、イエス・キリストって人がやってきて人間の罪を背負って罪人みたいに磔(はりつけ)にされるわけよ(ナルニアでも○○○○がエドのために犠牲になる)。その結果、終わりの日が来たら神を信じる人たちに永遠の命と幸せがあたえられるっつーのが聖書の物語ね。客観的にストーリーを追えば、ありがたやキリスト、これからは道を踏み外さないように生きようって感じになるんだけど、登場人物の人類として日々を過ごしてるとそんな風には感じずに、ありがちな誘惑に負けてのんべんだらりと暮らしちゃう。エドマンドはそんな人類の象徴だったりするわけ。

 出てくる動物たちがリアルというか、擬人化を最小限にとどめてあるのもいい。近づいたら動物臭い息がワフワフほほにあたりそうな感じがする。そういうリアルな動物が立ち上がって言葉を話すのがナルニアっぽい感じなんだよね。おそらく第二章以降に出てくるはずのリーピチープなんかも、ネズミ嫌いが悲鳴をあげるようなリアルなキャラにしてほしいなあ。アップになるたびに口元とかヒクヒクしたりして。でも騎士道精神にあついネズミなわけよ。そういうのを希望。

 というわけで、『ナルニア国物語』はけっこういいです。