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着物は自分で縫うと洋服買うより安いんだぜ?

 ちょっと前から普段着として着物を着ようと思い立ち、最初は中古の着物や中国製の安売り着物なんかを購入して遊んでいたわけです。

 ところが着慣れてくるといろいろあるわけです。もう暑いので夏用の長襦袢が欲しいなあとか、夏向けの明るい色の着物が欲しいなあとか、その他もろもろ。

 ところが「こういうものが欲しい」と思って買おうとするとお金がかかるのが和服の世界です。前に安売りの着物を買った店で、長襦袢はいくらするのか聞いてみたら、

「お仕立てからなので 1万円からになりますが、いつ御召しになりますか?」

っていわれちゃった。

 襦袢って着物の下に着るやつですよ。つまり下着なんですが、それが1万円からって鼻血出そうでしたわ。一般には着物=晴れ着でしょうから、何十万もする晴れ着になら1万円の長襦袢もアリでしょうけど、わたしが普段着にしているものは帯もセットで3千円程度だったりしますから、もう別世界です。

 ないならしょうがない、作っちゃえばいいんですよ。昔のお嬢さんたちは自分で縫ったんですから出来ないことはないでしょう。

# ここから下、写真で着物の合わせが逆になっているのは鏡に映ったのを撮影しているからです。

最初に縫ったのはこれ

 ってなわけで、図書館で和裁の本を見たり、YOUTUBEで和裁をやってる人の動画を見たりして気分をもりあげつつ、最初に縫ったのがツイートもした↓これ。
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 ウールの反物で単衣(ひとえ)に仕立てました。衿は広衿です。

 和裁は初めてなので、最初は本に書いてあることを理解するのが難しかったんですが、手順通りにやってみると「書いてあるほど難しくないかも?」という感じでした。ただ、衿つけがちょっとだけ難しかったかな。

 反物はネットの通販ショップで買いました。素材はウールで、なんと1反980円でした。むしろ安過ぎて鼻血が出そうですね。店晒しになってたものなので難アリ品という扱いでしたけど、広げてみても特別問題もありません。こんないいものが洋服を買うより安く手に入るんなら使わない法はないですね。

 衿の裏地として洋服の裏地を買いましたが、ダイソーで105円だったのでこれまたお金がかかってません。

 最初なのでいろいろ難はあります。もうちょっと裄(ゆき)があってもよかったなあとか、腰ひもをウエストあたりに締めたいので褄下(つました)をあと3センチくらい長くしてもいいなあとか。このへんは着方でカバーできるし、チャンスがあったらほどいて直そうかと思っています。洋服と違ってほどけば修正可能なんですよ。着物って面白い。

二番目は長襦袢

ファイル 1586-5.jpg
 着物の下は長襦袢じゃなくてもいいんですけど、たまたまタンスの中に絽の反物(たぶん洗えるポリエステル)が入っていたので思い切って縫ってみました。絽というのは風通しがいいように細かい編み目状に織られた布(という説明でいいのかな?)のことです。

 なんでそんなものを死蔵してたかっていうと、たぶん近所のイトーヨーカドーかなんかでワゴンセールだったのを買ったんです。3000円くらいだったかなあ。今思うと高いですね。なんせ着物地が980円なわけだし。

 当時は着物を縫おうなどとはこれっぽっちも思っておらず、カーテンかなんかにしてやろうと思ってました。結局カーテンは作りませんでしたが、端を少し切って何かに使ったような気がします。そんなこんなで着物にするには長さがたりなかったのですが、長襦袢なら、おはしょりの分がいらないのでどうにかなりました。

 これまたさまざまな難があります。特に衿がよろしくないですね。身ごろにシワが寄っちゃったりして。

三番目はこれ

 そうこうしてるうちに世の中が真夏なみに暑苦しくなってしまいました。まだ5月なのに…! というわけで、次は真夏に着られそうな着物が欲しくなりました。

 木綿がいいなあ。ザブザブ洗えるといいなあ。通販もいいけど手触りを確かめてから買いたいなあってなことを考えつつ、最初は近所の手芸店をまわったんです。べつに着物用の反物である必要はないので。

 ところが近ごろでは手芸屋さんがお洒落になりすぎて布が高いのなんの。ちょっと素敵なものだとメータ1000円とか普通にしやがるんですよ。またもや鼻血が出そうですわ。そんな高い布じゃ練習に使えないし、どんどん手芸離れが進んでしまうというの。

 で、なんとなく日暮里の繊維街を歩いてみたら、おおお、ここはすごい。使えそうな布がメーター100円で投げ売られている!!! 繊維街おそるべし。侮ってましたわ。

 洗うことを前提にしているので縫う前に水を通して縮めてから作業にとりかかりました。そして出来上がったのが↓これです(自分撮りむずかしい)。
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 単衣で、衿は撥衿(ばちえり)にしてあります。衿付けも三度目なのでだんだん慣れました。本には緩めろだの平らだの書いてあるけどあんまり気にする必要はないんじゃないのかなあ、などと暴言を吐いてみる。

 110cm幅の洋服地を5m買いました。布代500円しかかかってない(自分で書いてて目が点になりそう)。まっすぐ縫うところはミシンを使ったので、製作3日くらいかな。

 洋服地は着物用の反物とちがって幅があるので衽(おくみ)と前身ごろを分けずに作りました。

 着物の前が衽と身ごろを縫い合わせて作るのは、幅の狭い反物を使うからだと思うんです。洋服地ならばもともと幅が広いので、わざわざ切って縫い合わせる必要などないと思うわけです。

 衽線(縫い目)がないと見た目が寂しくなるんじゃないかと心配もしましたが、実際に作ってみるとそうでもなかったです。衽線など飾りですよ。偉い人にはわからんのですよ!!ってなもんで。

 装飾として衽線が欲しい場合は切り離さずにつまんで縫えばいいんじゃないですかね。そのほうが柄合わせも悩まずにすむし。

 前回の反省をふまえて裄を少し出して褄下を長めにしてみました。この改善はなかなか良かったかもしれないです。# そういうことを言ってるそばから突然宗旨替えして「いや、褄下は長くしちゃだめだ」とか言いかねないので注意が必要です。ようするに実験中でよくわかっていないのです。

 あとは身ごろの丈そのものをもう少し調整するとおはしょりがベストの長さに出やすくなりそうな予感。次回はそのあたりを追求したいです。

衽(おくみ)とは、合い褄とはなんぞやという人のために図解

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 大ざっぱに図解すると、着物は図左のように、衽(おくみ)・身ごろ・袖(そで)、衿(えり)を縫い合わせて出来ています。

 衽と身ごろを縫い合わせた線を衽線(おくみせん)と言って、着た時に図右の赤い点線の部分に縫い目が出ます。


 合い褄は図のように衿が終わってる部分のことです。褄下は合い褄から裾までの長さのこと。

 なんで褄下の長さが問題かっていうと、腰紐を合い褄にかけると衿のおかげで着崩れにくくなるっぽいからです。

 が、たいていの着物は合い褄が腰骨の上くらいに来るようになっていて、ウエストに紐をかけたい場合、合い褄位置を標準よりも上にしたほうがよさげな感じなのです。

 ただし、身丈をそのままに合い褄だけ位置を変えると衿の角度も変わってしまうし、あまり上すぎると裾すぼまりに着づらいとかもありそうだし、そこらへんんはいい具合のところでおさめる必要があるかもしれないです。

 というのを試行錯誤してるわけです。結局標準的なサイズで収めるのが最良なのかもしれないですが(笑)

小物作りもまた楽し

 わたしは半幅帯の愛用者なので帯締めはなくてもいいのですが、飾りとしてこんなのを作ってみました。
ファイル 1586-3.jpg
 このショッキングピンクの帯締めはリリヤン編み機で編んだものです。リリヤン編み機は昔の駄菓子屋でよく売ってたアレです(今でもダイソーとかで売ってます)。糸はこれまたダイソーで買った太めのレース糸です。サマー毛糸なんかも使えると思います。

縫い方を覚えるために読んだ本


【送料無料】新きもの作り方全書 [ 大塚末子 ]
 この本は70年代に発行された古い本なのですがいまだに版を重ねて出つづけているようです。女物だけでなく男物の着物や、子供の着物、袴(はかま)や羽織の縫い方など、かなりまとまった情報が掲載されています。

 実は衽と身ごろを一体で作るアイデアはこの本に出てました。外にも衿と衽を一体で作ることで細身の人にぴったりフィットする着物とか、けっこう斬新なことも書かれてます。 # ごめん、衿と衽を一体にするのはこの本じゃなかったかも。長襦袢の通し衿(これはこの本にも出てる)の下の方を幅広にした感じのものだったと思います。あとで出てる本を確認しときますね。

 70年代だと、年配の女性はフツーに着物を着て炊事も選択もしてました(サザエさんちのおフネさんみたいな感じです)。そういう時代の本なので、着物を過去のものとして見てないんでしょうね。晴れ着などでは伝統を守る必要があるでしょうが、フォーマルでない場合は自由な発想で進化してっていいんじゃないでしょうか。

 ちなみに、洋裁の本みたいに型紙がついてたりはしません。着物の印付けはほとんど直線を引くだけですし、型紙は必要ないはずです。が、ないと困るっていう人はこの本を買っちゃだめですから注意してね。

訂正

> 衿と衽を一体で作ることで細身の人にぴったりフィットする着物

 というのを上記の本の内容と思い違いして書いてしまいましたが、本当は『きものの仕立て方・頼み方』という本に出ています。

衿衽続きのきものとは
 この仕立て方は、昭和39年に上田美枝さんが発表したものです。下の図でもわかるように、通常の衽の位置に衽衿をつけ、一般的な衿はついていません。そのほかは普通の着物と同じです。
 この方法で仕立てたきものは、痩せて背が高い人にも向きます。(中略)また用尺が短いときの仕立てにも都合がよく、厚手の生地の場合もおはしょりが厚くならず、処理が楽にできます。

 というようなことが図解つきで詳細に書かれてます。面白い発想なのでなんとなく作ってみたくなってしまいますが、衿先に腰ひもをかけて着る人だと着崩れやすいのが難だそうです。そのためにどこに紐を縫い付けると良いというような説明もあります。

 とかく現代では「着物はこう着ないとはずかしい」というような決まりが先行して小うるさい状態ですが、日常的に着物を着る人が多かったほんの30〜40年前には新しい発想の仕立て方を研究している人がそれなりにいたようです。

 『きものの仕立て方・頼み方』は、和裁の入門書ではなくて、有る程度心得のある人が、さらにステップアップして気安さを求める時なんかに読むといいかもしれません。また、タイトルに「頼み方」とあるように、仕立てや直しに出す時にも参考になるかもしれません。なかなかいい本でした。

タグ:手芸

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  • 2013年05月28日(火)10時12分
  • 趣味::手芸

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